財務諸表分析
1.分析方法
- 時系列分析
- 標準値との比較
- 同業他社との比較
- 目標値との比較
2.収益性分析
- (1) 売上高総利益率
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売上高利益率(粗利益率)は、販売している製品や商品の利益率(マージン率)が高いかどうかを示している。すなわち、売上高総利益率が高いということは、営業力の強さ、あるいは製品の品質の良さを意味している。
売上高利益率は、同一業種では同じ水準になる傾向にある。この比率が同業他社より低ければ良くない傾向である。利益率の中でもっとも注目すべき比率である。一般的に、製造業は15~60%、小売業は20~30%、商社は1.5~2.0%である。 - (2) 売上高営業利益率
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売上高営業利益率は、企業本来の営業活動による利益率であり、本業の利益率が高いかどうかを示している。営業利益率はいわば会社の営業力の指標といえる。営業力が弱ければ販売に多額の費用が投入されており、利益率が落ちる。
売上高営業利益率を他社と比較することにより、販売活動や管理活動の効率性を知ることが出来る。また、販売費の内容、たとえば広告宣伝費や販売手数料(リベート等)等の金額を分析することにより、マーケティングの違い等も把握することが出来る。 - (3) 売上高経常利益率
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売上高経常利益率は、財務活動等を含めた通常の企業活動における利益率を示している。金融収支の善し悪しや資金調達力の違い等の財務体質を含めた総合的な収益性が示される。売上高経常利益率が低いときには、リストラ等によって、資産を売却して負債を返済する等して財務体質を改善する必要がある。
売上高経常利益率は、会社の業績を知る上で重要な指標であるため、企業側は、含み益のある有価証券を売却して有価証券売却益を出し、経常利益を増加させるといった利益操作を行うことがあるので、注意が必要である。
この比率で他社との実力の差を比較できる。利益率の高い任天堂で30.0%。薬品、不動産業界の利益率はこれよりも高いこともある。 - (4) 売上高当期利益率
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売上高当期利益率は、会社のすべての活動の結果として得られる利益率である。最終的な利益の比率として、会社の活動が、株主の配当原資や資本の増加にどの程度結びついたかを示しており、株主にとって注目すべき重要な比率である。
売上高当期利益は、経常利益と同様に、企業側が、含み益のある投資有価証券や土地等を売却して売却益を出し、利益操作を行うことがあるので注意が必要である。 - (1) 総資産回転率(総資本回転率)
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総資産回転率は、企業の資産をどの程度効率的に使って売上高に結び付けているのかを示す指標である。総資産回転率が高いほど、資産が売上高に効率的に結びついたことを示す。すなわち、総資産回転率が1.0を下回ると、一般に、売上に見合う総資産のサイズまで減量しなければ会社の経営に悪いひずみが出ると言われている。
たとえば、負債の減量を失敗すれば金利の負担が増える。処方としては、資産を減らし、その結果生じた資金で負債を返済し、総資産の総量を減らすことが考えられる。また、総資本回転率の推移を調べ、会社の体質の変化をつかむことが出来る。
また、次式によって、総資産回転日数を計算することも出来る。この場合は、日数が少ないほど、資産が売上高に早く結びついていることを示している。
総資産回転日数 = 総資産 売上高 × 365(日) - (2) 売上債権回転率
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売上債権回転率は、会社の売上債権(売掛金や受取手形、注記に示される受取手形割引高)をどの程度効率的に管理しているのかを示す比率である。売上高回転率が高いほど、回収が短期間でなされていることを意味している。売上債権の残高が売上高の規模と比べて妥当な範囲か、無理な販売政策を採って信用が膨張していないかをチェックする。過去の趨勢を調べ、会社の販売方針と債権の資産性を検討する。
また、次式によって、売上債権回転日数を計算することも出来る。この場合は、日数が少ないほど、短期間で回収されていることを示している。
売上債権回転日数 = 売上債権 売上高 × 365(日) - (3) 仕入債務回転率
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仕入債務回転率は、会社の仕入債務(買掛金、支払手形、注記の受取手形譲渡高)がどの程度効率的に管理されているかを示す比率である。仕入債務回転率が高いほど、支払いが短期間でなされていることを示す。
また、次式によって、仕入債務回転日数を計算することも出来る。この場合は、日数が少ないほど、短期間で支払がなされていることを示している。
かつては回収を出来るだけ早く、支払は出来るだけ延ばすことが資金繰りの面で有利であるという意識が強かった。しかし、最近では、支払を早く行うことによって仕入金額を値引きしてもらったり、また、総資産を減少させることを重視する企業も増えている。仕入債務回転日数 = 仕入債務 売上原価 × 365(日) - (4) 在庫回転率(棚卸資産回転率)
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在庫回転率は、会社が在庫(商品、製品、原材料、仕掛品、貯蔵品等)をどの程度効率的に使って売上高に結び付けたかを示す指標である。在庫回転率が高いほど、在庫が効率的に売上高に結びついたことを示す。回転率が低ければ、棚卸資産の手持ちは多すぎるし、回転率が高すぎれば、注文にすぐに応じることが出来ない不安がある。会社にとって、どのくらいの手持ちが合理的か判断する必要がある。一般的に、造船重機の在庫は少なく、繊維、総合電機は在庫が多い。
また、次式によって、在庫回転日数を計算することも出来る。この場合は、日数が少ないほど、在庫が効率的に売上に結びついていることを示す。また、この日数を30日で割ると在庫回転月数になる。
在庫回転日数 = 棚卸資産 売上原価 × 365(日) - (1) 自己資本比率
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自己資本比率は、総資産に占める資本の割合を示している。自己資本比率が高いということは、返済義務のない資金が多いことを意味し、業績が悪化しても債務超過を避けるための抵抗力があり、安全性の観点からは好ましいといえる。
ただし、高すぎれば会社の機動力は衰える傾向がある。すなわち、借入コストよりも儲かる事業があれば借入金をもとに事業を拡大し、より多くの利益を稼ぐことができる可能性があるので、適度なバランスが必要である。自己資本比率は40%以上が望ましい。自己資本比率が低ければ経営の不安定要因になりかねない。
- (2) 流動比率
- 流動比率は、会社の短期的な支払能力がどの程度あるのかを示す比率である。流動負債が流動資産でどの程度カバーされているのかを示す。ただし、流動資産の中には、長期間未回収となっている不良債権や不良在庫が多く含まれている場合があるため、注意が必要である。流動比率は「2対1の原則」ともいわれ200%を超えるのが理想といわれている。特に欧米では金融機関が融資に際して重要視する比率である。この比率が低ければ、金融機関からの信用度は低下する。
- (3) 当座比率
- 当座比率は、当座資産が流動負債をどの程度カバーしているのかを示す指標で、流動比率よりさらに支払能力を厳しくみるものである。当座資産は「1対1の原則」といわれ100%以上が望ましい。ここで、当座資産とは、流動資産から現金化しにくい棚卸資産等を除いたもので、現金預金、受取手形、売掛金、短期保有の有価証券等の現金化しやすい資産を指す。
- (4) 固定比率
- 固定比率は、会社の固定資産に対する資金調達減の安定性を示す比率である。この比率は、長期資金が拘束されてしまう固定資産に対する資金の調達が、安定的な資金源である自己資本によってどの程度まかなわれているかを示す。固定比率が低いほど、固定資産についての資金調達が安定していることを意味している。固定比率は100%以下が目標となる。100%を超えれば借入金で設備投資を行っており、借入金の返済、金利の負担等の問題が生じる。ただし、固定比率が100%を大幅に下回っている場合でも、減価償却の進んだふるい設備が多い場合などは、将来の競争力について不安があるとも予想される。
- (5) 固定長期適合率
- 固定長期適合率は、固定負債と自己資本に対する固定資産の比率であり、長期的な資金と固定資産とのバランスを示す。固定比率が100%を超えていた場合には、この固定長期適合率は100%以下が望ましい。
- (6) 手元流動性
- 手元流動性は、手元にある流動的な資金がどの程度あるかを示す。資金残高それ自体を示す場合と、それを1日の売上高で割って計算する場合がある。手元流動性は、会社の厳密な意味での支払能力の余裕度を示すものであり、日本の上場企業の場合平均50~60日である。
- (7) インタレスト・カバレッジ
- インタレスト・カバレッジは、営業利益と金融収益が、支払利息をどの程度上回っているかを示す。この比率が高いほど、財務的に余裕があることを意味している。ただし、成長段階にある会社は、借入を増やして事業を拡大することがあるので、会社の成長段階を考慮する必要がある。日本の上場企業の平均は、約2倍といわれている。
- (1) 売上高成長率
- 売上高成長率は、会社の成長性という観点からもっとも基礎となる指標である。この比率が大きいほど会社の規模が大きくなっているといえる。会社の売上高成長率は、市場の成長率や物価上昇率とのかねあいで見ることが必要となる。また、会社の事業が急激に成長しているときには、安全性が低下したり、債権回収や在庫管理などが追いつかなくなることがあるため、業務内容についても注意して見る必要がある。
- (2) 総資産成長率
- 総資産成長率は、会社の財産的ナ規模の成長性を示す指標である。この指標が大きいほど規模が拡大していることを意味する。総資産成長性が高い場合でも、それが売上高や利益の増加を伴っていない場合には、総資産増加のメリットがないので、総資産の成長によって何がもたらされたかを分析する必要がある。
- (1) ROA(総資産利益率)
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ROAは、企業が所有している資産を使って、どれだけの利益を上げているのかを示す指標である。厳密には、「利益」として支払利息控除前経常利益(EBIT:Earnings Before the deduction of Interest and Taxes)を使用するが、「営業利益」「経常利益」「当期利益」などで代用することもある。日本では、取得原価主義を採用しているので、同業種で、規模、売上高、利益が同じであった場合でも歴史の古い会社のROAが高くなる傾向にある。
ROAは、「売上高経常利益」と「総資産回転率」に分解できる。
全業種平均は3.20%、製造業平均は4.17%、非製造業平均は2.40%。ROA(総資産利益率) = 経常利益 総資産 = 経常利益 売上高 × 売上高 総資産 - (2) ROE(自己資本利益率)
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ROEは、表面的には高い方が良いとされているが、総資本(負債+資本)の投下額と獲得した利益の金額が同じであっても、自己資本比率が小さくなれば、ROEは大きくなる。すなわち、少ない自己資本で多くの資産を活用して利益を上げた方が経営効率が良いと一概に言えない。ROEを議論するには経営内容をしっかりと見る必要がある。ただし、この比率は株主の持分に対する比率であるので、企業の株主を満足させる利益を上げているかを測定しているといわれており、ROEを重視することは株主重視の経営であるといわれる。
ROAは、「売上高当期利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」に分解できる。
財務レバレッジとは、総資産が自己資本の何倍あるかを示す比率であり、負債をどの程度有効に活用しているかを表している。自己資本比率が低ければ、財務レバレッジは高くなり、自己資本比率が高ければ、財務レバレッジは低くなる。 または、ROE(自己資本利益率) = 当期利益 自己資本 = 当期利益 売上高 × 売上高 総資産 × 総資産 自己資本 └----- ROAの概念 -----┘ 財務レバレッジ 利益 自己資本 = 利益 売上高 × 売上高 総資本 ÷ 自己資本 総資本 自己資本利益率 └----- 総資産利益率 -----┘ 自己資本比率 - 会計方針との関係:採用する会計方針が違うと企業間比較が難しくなる。
- 取得原価主義:土地や有価証券の時価が財務諸表には反映されていない。
- 財務諸表に現れない項目:ブランド力やノウハウ等の価値は、財務諸表に載っていない。
- 業界特性:異なる業種を比較することは非常に困難である。
- 成長段階:同じ業界であっても、成長段階が異なると企業行動も異なる。
売上高総利益率 | = |
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× | 100(%) |
売上高営業利益率 | = |
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× | 100(%) |
売上高経常利益率 | = |
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× | 100(%) |
売上高当期利益率 | = |
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× | 100(%) |
3.効率性分析
総資産回転率 | = |
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売上債権回転率 | = |
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仕入債務回転率 | = |
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在庫回転率 | = |
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4.安全性分析
自己資本比率 | = |
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流動比率 | = |
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当座比率 | = |
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固定比率 | = |
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固定長期適合率 | = |
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手元流動性 | = | 現金+短期所有の有価証券 |
インタレスト・カバレッジ | = |
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5.成長性分析
売上高成長率 | = |
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総資産成長率 | = |
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6.総合力分析
ROA(総資産利益率) | = |
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ROE(自己資本利益率) | = |
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